競輪コラム

KEIRINグランプリ2021 宿口陽一選手に帝王・山田裕仁氏がインタビュー!

KEIRINグランプリ2021に出場する宿口陽一選手。帝王・山田裕仁氏がグランプリにかける思いや心境をインタビューしました!

※このインタビューは競輪祭(GI)前に実施したものです


山田:まずは、グランプリ初出場おめでとうございます! 6月の高松宮記念杯競輪(GI)で優勝してから、早くも半年近くが経過したわけだけど。

宿口:ハイ。時間の流れが早すぎて、大丈夫なのかって気持ちです。

山田:そういうものだよね(笑)。とはいえ、特別競輪は初優勝だったわけで、感慨深かったんじゃないですか。ゴールの瞬間、どんな気分だったか覚えてる?

宿口:じつはあのときって、吉田拓矢選手が獲ってくれって思っていたんですよ。「吉田拓矢、頑張ってくれ!」って思いながら、ハンドルを投げたんです。でも、自分が抜いたような感覚があったので、これはちょっとヤバイなと(笑)。

山田:そんなことを思いながら抜いちゃったんだ(笑)。でも、少し時間をおいてから、自分が優勝したんだという実感がジワジワ出てきたんじゃない?

宿口:実感というか……高松宮記念杯競輪の直後に静岡で走ったんですが、そのときにすごい勢いで、僕から車券が売れていたんですよ。

山田:それはまあ、当然そうなるでしょう。

宿口:いやいや、当然じゃないです(苦笑)。その静岡での最終日なんて、個人的には「これはどう考えても厳しい」というレースだったのに、それでも僕から売れているんですから。あれを見て、とんでもないことになったと思いましたね。

山田:何か自分が変わったわけじゃないのに、タイトルホルダーになった瞬間、周りの評価がガラッと変わるからね。そういえば、10月には前橋のドームスーパーナイトレース(GIII)で優勝して、記念の初優勝も決めたじゃないですか。あのシリーズも「宿口が不動の中心」みたいな雰囲気だったと思うんだけど。

宿口:柴崎淳や吉澤純平がいましたから、そんな空気はなかったですよ。普通に考えたら、僕よりも彼らのほうが強いじゃないですか。だから、とにかく負けないように頑張ろうという気持ちでいました。

山田:そんな感じで気合いを入れていたら、柴崎選手がムカデに刺されて初日から欠場するという(笑)。あれが、逆にプレッシャーにはならなかった?

宿口:柴崎淳の欠場は優勝を狙う上で確かに大きかったですが、それでもまだ吉澤純平がいましたから。関東でもトップクラスの先行選手で、怪我をしていたとはいえ、その強さはよく知っています。決勝戦でも気負わずに、どういったレース運びをするかを必死に考えていましたね。

山田:どうやって強敵と戦おうかという“気持ち”のほうが強かったと。

宿口:そうです。とにかく僕にやれる精一杯のレースをして、それで勝ち負けの勝負ができて、お客さんにも納得してもらいたいという気持ちで走っていました。あそこで「勝たなきゃダメだ」って考える選手もいるとは思うんですが……。

山田:でも、それでプレッシャーに押し潰されてダメになっちゃう選手もいるからね。それにしても謙虚というか、宿口くんらしいというか。

宿口:高松宮記念杯競輪で僕が優勝できたのは、本当に吉田拓矢のおかげですからね。自分で位置を取って捲ったとか、主導権を奪って逃げ切ったとかであれば、周りの評価が急に上がるのもわかるんです。でも、そうではない。だから「それは違うよ」といった気持ちが、いまだに僕の根底にあるんです。

山田:なるほどなあ。

宿口:それもあって、GIで優勝してグランプリ初出場が決まったといわれても、実感がないんですよ。それに、僕にとってグランプリといえば「平原さん(平原康多選手)を応援するもの」だったんで。そこに今年は僕が一緒に走るというんですから……ハンパじゃなく緊張しますよね。

山田:実感はないけど、緊張はするんだ(笑)。では、宿口くんの気持ちはともかくとして、周囲の反応や環境の変化はどうですか? タイトルホルダーになると、あれこれ変わってくるものだと思うんだけど。

宿口:平原さんが近くにいるので、環境自体はあまり変わりません。でもなんか、周りの練習での“熱”がすごい。僕がタイトルを獲ったことで、「宿口が獲れたんだから俺も獲れる!」みたいな感じで、燃え上がっているんです(笑)。

山田:宿口くんの活躍が、周囲にとってもいい刺激になっているということですよ(笑)。じゃあ、自分自身のなかでの変化はどうですか? タイトルを獲ってから、練習の内容や強さが変わってきたとか。

宿口:平原さんを含めて、普段から一緒に練習しているメンバーがいるんですが、そういう人たちから「強くなったよね」みたいなことは言われます。それが自信になったりもするんですが……平原さんがもっと強いんで。一瞬だけ「少しは追いついたかな」と思えた時期があったんですが、そこからまた一瞬で離されました。

山田:ちなみに、間近で練習している宿口くんから見て、平原選手のストロングポイントは「どこ」なんだろう? スタミナがすごいっていうのは、私も常日頃から感じていることなんだけど。

宿口:平原さんって、ノーモーションからいきなり120%くらいの力が出せるんですよ。だから、その「見分け」が難しいんですよね。あとは当然、ダッシュ力もあるし、トップスピードもある。いやもう、強すぎてヤバイです。

山田:では、宿口くんが「ここだけは平原選手に勝てる」というところは?

宿口:う~ん……ギアの回転力だったらいい勝負ができそうですね。軽いギアでの練習をすることがあるんですが、そのときだけは同じくらいの速度だったり、僕のほうが出ているんじゃないかという瞬間もあります。

山田:でも、そういった強い存在が身近にいて、ライバルではあるんだけどアドバイスも貰える環境というのは、やっぱりいいよね。

宿口:ハイ。常に平原さんを目標にしてやっているので。まだまだ遠い存在なんですけど、それがすごくいいモチベーションになります。そのほかのメンバーも、みんなすごくやる気や向上心があって、雰囲気もいいんですよ。本当にいい環境のなかで練習させてもらっていますね。

山田:ではここからは、グランプリについての話を聞かせてください。本番が少しずつ迫ってきているけど、それに向けた練習なども始めているの?

宿口:今のところは変化ナシですね。グランプリに向けて特別なことはせずに、これまでと同じような練習をしながら過ごしています。9月くらいからちょっと試していることはありますが、練習の内容自体は変わっていません。

山田:練習の内容を変えていないとなると、いったい何を変えたんだろう?

宿口:じつはオールスター競輪が終わったときに、桑原大志選手からアドバイスを頂戴したんですよ。来年になってそれが絶対に生きてくるから「調整しないでそのままレースに行く」のを試してみろと。FIは調整しない、GIIIは軽めの調整でいいよ、みたいな。

山田:なるほど、先々を見据えて新しい調整方法を試していると。

宿口:ハイ。さすがに初日はちょっと身体の重さを感じますが、そこからは調子が尻上がりによくなっていくので、手応えを感じています。もう年齢が年齢なのですごく疲れますが、そのケアはしっかりできていると思います。

山田:平原選手が寛仁親王牌(GI)で優勝して今年もグランプリ出走が確定しましたが、どういった戦い方をしようといった相談はもうしているのかな?

宿口:そういった話は、今のところいっさい出てないです。一緒に走れることが決まったときに、よろしくお願いしますと僕が伝えた程度ですね。

山田:具体的にどういったレースをしようといった話はなく、挨拶程度だったと。でも、宿口くんは初出場じゃないですか。グランプリってこういうものだから……というアドバイスくらいは、平原選手のほうからありそうだけど。

宿口:それもない……というか、僕が聞いていないんですよ。早い段階からそういった話を聞いてしまうと、本番まで僕のメンタルがもたなさそうなんで(笑)。そういうのは競輪祭(GI)が終わって、出場メンバーが正式に決まってからにしようかと。

山田:やっぱりそうだよね。競輪祭が終わって出場するメンバーの顔ぶれを見てから、具体的にどう戦うかを、平原選手と相談することになる。

宿口:そうですね。そこがいちばん……緊張しますね(笑)。

山田:そんなに緊張するんだ(笑)。とはいえ、宿口くんの気持ちとしては当然、自分が平原選手の前で頑張りたいって感じだよね?

宿口:出場メンバー次第ではありますが、できれば自分が前を走りたいという気持ちが強いですね。ただ、平原さんは僕が前にいないほうが強いんですよ(笑)。

山田:自分が前にいないほうがよさそうな感じならば、そのときはそのときで考えると。

宿口:そうですね。自分の気持ちは競輪祭の後にちゃんと伝えようとは思っているので、あとは平原さんが決めてくださればと。やみくもに「僕が頑張ります!」と伝えるのも、どうかと思いますから。

山田:なるほど。では最後に……平原選手もまだ優勝したことがないグランプリだけど、そんなレースであっても「自分が獲る、優勝するぞ!」という思いはあるよね?

宿口:グランプリに出場できたから満足というわけではないんですが、僕が絶対に優勝するんだといった強い気持ちは……あんまりないんですよね(笑)。平原さんに勝ちたいという気持ちはありますけど、それはいまの脚力では無理なんで。

山田:普段から一緒に練習して差を感じているからこそ、平原選手に勝って自分が優勝するぞという感じにはならないってことね。では、聞き方を変えましょう。グランプリ、勝ちたいよね!

宿口:ハイ。僕をずっと応援してくれている人もいるし、出場する以上は優勝を目指すのが当たり前ですから。最初から負けるつもりでは走らないですよ。できれば最高の結果を出して、1億円を両手で掲げたいです!


「KEIRIN GRAND PRIX 2021」公式特設サイトにて出場選手インタビュー公開中

ウィンチケット編集部
WINTICKET(ウィンチケット)のコンテンツ編集チーム。初心者でも0からわかる記事を150本以上執筆した他、グレードレースを中心とした「WINTICKETニュース」、ABEMA 競輪・オートレースチャンネルでの番組の見どころをまとめたレポート記事の執筆を担当。

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