競輪コラム

今年おこなわれたG1レースをプレイバック!

競輪界最高峰のレース『KEIRINグランプリ(GP)』に出場する条件はいくつかある。賞金獲得額で上位に入ったり、夏季オリンピックや世界選手権自転車競技大会での活躍が認められたりすれば出場権は与えられるが、すべての選手が最も欲する条件はこれであろう。

G1競走優勝者。

年に6回あるG1レースで優勝し、「HERO」となってGPに出場したいと誰もが望んでいるはずだ。9月末日現在、それを叶えている選手がすでに4人いる。彼らがGP出場権を勝ち取ったレースを振り返ってみよう。

1年で最初のG1は『全日本選抜競輪』。今年は2月20日(土)から23日(火・祝)の4日間、川崎競輪場で行われた。川崎でG1が開催されたのは実に55年ぶりのこと。

シリーズが始まる前から注目を集めていたのは郡司浩平選手(SS・神奈川・99期)であった。地元・神奈川のエースであり、川崎をホームバンクにしている郡司選手。昨年11月の競輪祭に続く、G1連覇をなんとしても叶えて欲しいという地元ファンの声が数多く集まった。

「気持ち的にもかなり気合いが入った」という初日特選12R。今年、中部から南関に移籍してきた深谷知広選手(S1・静岡・96期)との初連係で番手を走ったが、清水裕友選手(SS・山口・105期)に敗れて2着という結果に。1着を獲れなかった悔しさを胸に2日目のスタールビー賞へ。

ここでも深谷選手の番手戦となったが、清水選手の攻めに深谷選手を残せずシビアに踏み込んでの1着。準決は前をやる自力戦で粘っての2着で優出を果たした。「ここからが本当の勝負」という決勝へ。最大のライバルはシリーズで好調だった清水選手と②松浦悠士選手(SS・広島・98期)の中国ゴールデンコンビである。

号砲と共に飛び出したのは②松浦選手、③平原康多選手(SS・埼玉・87期)、そして⑦郡司選手。Sを取り切ったのは③平原選手だった。並びは③平原-⑧諸橋愛選手(S1・新潟・79期)、⑨清水-②松浦-⑥園田匠選手(S1・福岡・87期)、④深谷-⑦郡司-①和田健太郎選手(SS・千葉・87期)、そして最後方に単騎の⑤守澤太志選手(SS・秋田・96期)となった。⑦郡司選手は初日、2日目と同様、④深谷選手の番手で勝負。

赤板で一気に行ったのは④深谷選手だった。南関ラインと⑤守澤選手の4車が前に出切って打鐘を迎えてもペースを落とさず、全力の④深谷選手が先頭で最終ホームまで一列棒状のまま。1コーナーから⑨清水選手が巻き返そうとしたところへ、2コーナーで合わせて踏み込んだ③平原選手。バックでさらに合わせた⑦郡司選手が番手捲りに出て、2センターへ。③平原選手は⑦郡司選手の後輪に接触し、車体故障で後退してしまう。そのまま⑦郡司選手が先頭でゴール。番手で付ききった①和田選手が2着、その3番手で追い上げていた⑤守澤選手が3着で、三連単⑦-①-⑤は4,390円の8番人気決着となった。

「いろいろとサポートしてくださった方々には結果で返すしかないなと思っていたので、最高の形で終われて良かったです」との郡司浩平選手が今年のGP出場一番乗りを、地元G1優勝で決めたのである。

次のG1は5月の『日本選手権競輪』。昨年は残念ながら中止となってしまったが、今年は無観客ながら無事に行われた。5月4日(火)から9日(日)までの6日間、京王閣競輪場にて開催。

グランプリより欲しいタイトルだという選手がいるほど、格式の高いレース。通称、ダービー。年初より「今年はダービーを獲りたい」と公言していた松浦悠士選手に注目が集まっていた。

2日目の特選に登場。2着で4日目のゴールデンレーサー賞へ。清水裕友選手とラインを組み、最終コーナーで先頭に立つが、郡司浩平選手にやられて2着。5日目第9Rの準決では近畿勢と絡んで危なかったが、なんとか3着に入って決勝へ進んだ。怖いのは予選準決をすべて2連対という勢いのある若手、眞杉匠選手(S2・栃木・113期)と番手に付く平原康多選手だ。

スタートで出たのは松浦悠士選手だった。清水選手を迎え入れて、⑦清水-③松浦、⑥松岡健介選手(S1・兵庫・87期)、⑤浅井康太選手(S1・三重・90期)、⑧眞杉-①平原-④武藤龍生選手(S1・埼玉・98期)、②郡司-⑨佐藤慎太郎選手という並び。

青板バックで動いたのは②郡司選手。⑧眞杉選手にフタをした。赤板バックまで行ってもフタをしたままの②郡司選手と引かない⑧眞杉選手のやりとりを見ていた前受けの⑦清水選手が打鐘から発進。すかさず②郡司選手も踏み出していき、中国コンビの3番手を獲りきった。⑦-③-②-⑨のS級S班4人並びで最終コーナーへ。直線で出る③松浦選手、その外を踏む②郡司選手、内から迫る⑨佐藤選手の3車踏み比べの末、横並びでゴール。長い写真判定の結果……優勝は③松浦選手となった。

2着は②郡司選手、3着は⑨佐藤選手で三連単は③-②-⑨、3,880円の配当に。見事、有言実行を果たした松浦選手が「ダービーキング」としてグランプリに乗り込む。

リニューアルしたばかりの岸和田競輪場にて6月17日(木)から20日(日)の4日間で行われたのが『高松宮記念杯競輪』である。

東西対抗となる「宮杯」。東は全日本選抜で勝たせてもらった深谷知広選手を郡司浩平選手が優勝に導き、西はダービーで勝たせてもらった清水裕友選手を松浦悠士選手が優勝に導くような戦いをするのではないかというのがシリーズ前の展望であった。G1初参戦となる山口拳矢選手(S1・岐阜・117期)にも注目が集まっていたのだが……。

初日特選11R、西は松浦選手が7着となり白虎賞に乗れず。12Rの東は郡司選手が6着で青龍賞に乗れないというハプニング。しかも郡司選手は二次予選で車体故障となり、途中欠場になってしまう。深谷選手も決勝には乗れず。予選回りから勝ち上がってきた松浦選手が自力の中国ゴールデンコンビ番手、清水選手に人気が集まる決勝となった。

②松浦-⑦清水が前受けとなり、①稲川翔選手(S1・大阪・90期)、⑥小松崎大地選手(S1・福島・99期)-③佐藤慎太郎選手-⑨守澤太志選手、⑤吉田拓矢選手(S1・茨城・107期)-⑧宿口陽一選手(S1・埼玉・91期)、④山崎賢人選手(S1・長崎・111期)の並びで周回を重ねる。

赤板ホームで動いて1コーナーで出切ったのは⑤吉田選手率いる関東勢。その上からすぐに出て行く⑥小松崎選手の後ろから、すかさず打鐘で前に出たのは②松浦選手。最終バックで単騎の④山崎選手が捲り上げてきたのに合わせて⑦清水選手が番手発進、これで決まりかと思いきや、合わせきれない⑦清水選手。抑え気味に先頭で直線へ入る④山崎選手。その外に出した⑤吉田選手の、さらに外から伸びてきたのは、まさかまさかの⑧宿口選手で、そのままゴール。⑤吉田選手が2着残して関東ワンツーに、大外を追い込んできた⑨守澤選手が3着に入って⑧-⑤-⑨の三連単は5万8,660円の高額配当決着。

「信じられないですね。(優勝の)予感はまったくなかったです」と宿口陽一選手。肘のケガで出られなかった同県の大先輩、平原康多選手の分までがんばりたいという思いが叶ってのG1初優出初優勝となった。平原選手とのGP連係を是非観たいものである。

その平原選手が4年ぶりにファン投票1位となった『オールスター競輪』は8月10日(火)から15日(日)の6日間、いわき平競輪場にて開催された。

東京五輪が終わってすぐ駆けつけた脇本雄太選手(SS・福井・94期)と新田祐大選手(SS・福島・90期)がメダルを逃した悔しさ晴らして優勝するのか。そうはさせじと今年前半の競輪を盛り上げてきた面々が奮起するのか。

初日のドリームレースを制したのは松浦悠士選手を利した清水裕友選手。2日目のオリオン賞は寺崎浩平選手(S1・福井・117期)の番手で直線を一気に追い込んだ古性優作選手(S1・大阪・100期)が勝った。4日目のシャイニングスター賞でも古性選手が勝利し、仕上がりの良さを見せつける。

初日こそ疲れが見えたが、あとは順当に勝ち上がってきた五輪代表の2人に、ファン投票1位に応えた平原選手、佐藤慎太郎選手と守澤太志選手の北日本SSコンビに福島からもう一人、成田和也選手(S1・福島・88期)、久々のG1優出の中川誠一郎選手(S1・熊本・85期)、今や南関の自力筆頭となった深谷知広選手、そして今節シード戦2連勝の古性選手の9名による決勝となった。

号砲で出た①新田選手に⑤佐藤-⑦守澤-⑧成田が付けて北日本4車、単騎で⑥中川、②脇本-④古性、単騎③平原、⑨深谷という並び。

単騎の⑨深谷選手が赤板で最後団から一気に前へ。これに乗って打鐘でさらに前へ出る②脇本選手に続く④古性選手、3番手には③平原選手。そのままペースを上げて逃げる②脇本選手に最終バックで挑んでいったのは①新田選手だった。しかしかかっている②脇本選手までは届かず。先頭で直線に入った②脇本選手の横に出して、最後に差しきったのは、番手の④古性選手だった。2着は残した②脇本選手、3着は大外を伸びてきた⑦守澤選手で、三連単は④-②-⑦の5,280円。

G1決勝7回目でようやく悲願を達成した大阪の“虎将”が、念願のグランプリ出場権をもぎ取ったのである。

ちなみに2着になった脇本選手は「古性君との信頼関係があのレースになりました。ラインで決めたいという思い、それが最大限できたんじゃないかと思います。日本の競輪にはこういう感動があるからやめられないですね」と語っていた。

東京五輪のケイリンは終わってしまったけれど、今年の日本の競輪はまだまだ続く。G1タイトルホルダーとしてGPに出場できる枠はあと2つ。10月の『寛仁親王牌』と11月の『競輪祭』で「HERO」となり、我々ファンに感動を届けてくれるのは誰だ!

ウィンチケット編集部
WINTICKET(ウィンチケット)のコンテンツ編集チーム。初心者でも0からわかる記事を150本以上執筆した他、グレードレースを中心とした「WINTICKETニュース」、ABEMA 競輪・オートレースチャンネルでの番組の見どころをまとめたレポート記事の執筆を担当。

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