競輪コラム

【大会展望・注目選手】第30回 寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(G1)

トップ選手たちの賞金争い!第30回『寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(G1)』 in 弥彦競輪

優勝すれば問答無用で年末の『KEIRINグランプリ』出場が決まるG1レース。年に6回あるG1も残すところ、あと2つとなった。

そのひとつ、『寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(通称:親王牌)』が10月21日(木)から24日(日)の4日間、新潟県西蒲原郡弥彦村にある日本で唯一、村営の公営競技場『弥彦競輪』で開催される。

1990年(平成2年)に群馬県前橋市のグリーンドーム前橋(前橋競輪)でおこなわれた『世界選手権自転車競技大会』。これを記念して開催された『世界選手権自転車競技日本大会特別記念レース』がそのルーツである。1992年(平成4年)に世界選手権日本大会で名誉総裁をお務めになられた寛仁親王殿下より「寛仁親王牌」が下賜されることとなり、3日開催のトーナメント戦になるとともに『世界選手権記念トーナメント(寛仁親王牌争奪)』へと改称された。

これを第1回大会として準特別競輪(現在のG2に相当)に指定。1994年(平成6年)には特別競輪(現在のG1に相当)へと格上げされると同時に『寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント』と名前を変えて、今に至る。

KEIRINグランプリまであと2大会

2016年(平成28年)からは毎年10月に開催されている、この大会。日程的に年末のGPまで“ラスト2”のG1であり、当落線上の選手たちにとっては優勝はもちろんのこと、1円でも多くの賞金を稼ぎたいシリーズになっているのだ。

1つでも上の着を目指すトップ選手が必死でもがき合うレースが連日展開される。それが親王牌である。

優勝候補の脇本雄太選手がまさかの病欠!5つ目のグランプリ出場枠は誰の手に

前述した通り、世界選手権を記念するレースがルーツとなっているため、自転車競技で活躍している選手を中心に選抜される。特に初日のメインとなる「日本競輪選手会理事長杯」の出場選手は「全日本プロ選手権自転車競技大会」の成績が選考基準の1つとなるのだが、今年も去年に続いて新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中止に。そのため、理事長杯は2年連続でS級S班9名による戦いになる予定だったのだが……。

まず守澤太志選手(SS・秋田・96期)が今年の2月から5月まで4カ月の違反点が120点を超えたことで10月は「あっせんしない処置」を下され、不出場となった。さらに脇本雄太選手(SS・福井・94期)が腰痛で病気欠場となってしまったのである。

オールスター競輪で準優勝、向日町記念 平安賞で完全優勝と、東京2020後も好調を維持していた脇本選手だったが、腰の不調で共同通信社杯を欠場したらしい。それでも10月に久留米競輪でおこなわれた熊本記念「火の国杯争奪戦」には出場したのだが、2日目から欠場。手術も覚悟するほど、腰の状態は悪いという。親王牌だけでなくGPでも優勝候補筆頭になる実力者の離脱。1日も早い復帰を願ってやまない。

寛仁親王牌出場予定のSS選手は?

以上、SSの2選手が不出場となり、初日(10月21日)16:30発走予定の12R、理事長杯に出場する選手と車番は以下のようになった。

和田健太郎選手(SS・千葉・87期)
松浦悠士選手(SS・広島・98期)
新田祐大選手(SS・福島・90期)
清水裕友選手(SS・山口・105期)
平原康多選手(SS・埼玉・87期)
深谷知広選手(S1・静岡・96期)
佐藤慎太郎選手(SS・福島・78期)
古性優作選手(S1・大阪・100期)
郡司浩平選手(SS・神奈川・99期)

③新田-⑦佐藤・⑤平原・④清水-②松浦・⑥深谷-⑨郡司-①和田・⑧古性といった並びか。⑥深谷選手が先に動き出すところを④清水選手が合わせてやり合う後ろから③新田選手が捲る展開が予想される。最近は別地区の自力に付くことが多い⑤平原選手が⑨古性選手の番手を主張するかどうかで流れはまた変わってくるだろう。

ちなみに5着条件で2日目のローズカップ出場と同時に準決勝進出も決まるのだが、GP当落線上にある清水選手、佐藤選手、平原選手辺りは着順にもこだわってくると思われる。親王牌を獲ればグランドスラム達成となる新田選手もここで準決を決めるべく、必死で踏んでくるはずだ。もちろん全選手が予選回りを避けたいため、本気で挑むのであろうが……。

その他、優勝争いに絡んでくる有力選手を地区ごとに見ていこう。まずは地元の関東勢。弥彦バンクを熟知している諸橋愛選手(S1・新潟・79期)は10月初めの熊本記念で優参して4着になるなど、好調をキープしている。何度も連係している平原選手の番手から抜け出しての優勝も、十分に可能性はある。鈴木庸之選手(S1・新潟・92期)は今年3回目の地元戦。6年ぶりの地元G1だけに気合いが入るだろう。今や関東の主軸となっている吉田拓矢選手(S1・茨城・107期)には6月の高松宮記念杯に続いてのG1決勝進出、さらには優勝にも期待が掛かる。ナショナルBチームの菊池岳仁選手(S2・長野・117期)の徹底先行はどこまで通用するか。

同じくナショナルBチームからは北日本勢を引っ張る強力な機動型、新山響平選手(S1・青森・107期)が出場。今年は2月の全日本選抜、6月の高松宮記念杯で準決まで勝ち進み、共同通信社杯では決勝に進出した。今度こそ、決勝で“番手新田”を引き連れての優勝が見られるのだろうか。

パリ五輪出場を目指す、ナショナルAチームの深谷選手が引っ張るのは南関東勢。8月に体調を崩し、9月の共同通信社杯でも完調とはいえなかった郡司選手にとっても、深谷選手の存在は大きいだろう。南関東からは他にも岩本俊介選手(S1・千葉・94期)や野口裕史選手(S1・千葉・111期)、渡邊雄太選手(S1・静岡・105期)といった自力選手が揃って出場。層の厚さが際立つ。

中部勢最注目といえば、デビュー1年4カ月足らずで共同通信社杯を制した山口拳矢選手(S2・岐阜・117期)だ。ただし、その後の松戸F1で優勝を逃し、青森F1は準決敗退。最終日特選では押し上げ落車失格しているのが気がかりである。どこまで調子を上げてくるだろうか。GP当落線上にいる浅井康太選手(S1・三重・90期)としては山口選手を利したいという思いがあるかもしれないが、これまでのところ、2人の好連係は見られていない。

脇本雄太選手が欠場となってしまった近畿だが、オールスターでタイトルホルダーの仲間入りを果たした古性選手がいる。高松宮記念杯で近畿地区から唯一の決勝進出を果たした稲川翔選手(S1・大阪・90期)もいる。当然、優勝争いをしてくるであろう。脇本雄太選手の弟、脇本勇希選手(S2・福井・115期)の活躍にも期待したい。

近年の競輪を大いに盛り上げ、中国勢をけん引してきた松浦&清水のゴールデンコンビ。清水選手は共同通信社杯で決勝に乗るなど調子を戻してきている一方、松浦選手は1次予選でまさかの敗退。敗者戦でも勝ちきれず、その後の熊本記念もとても本調子とは思えない結果だった。G1に向けて上げてきてほしいというのが、同地区の岩津裕介選手(S1・岡山・87期)や柏野智典選手(S1・岡山・88期)たちの願いであろう。

中国の2人の力を当てにせずとも勝ちきれるほど層が厚くなったのは四国勢。特に小倉竜二選手(S1・徳島・77期)を中心に太田竜馬選手(S1・徳島・109期)や阿竹智史選手(S1・徳島・90期)といった徳島所属選手の活躍は目覚ましい。2度目のG1出場となる石原颯選手(S2・香川・117期)がどこまでやれるかも見物である。

最後は九州勢。6年前の2015年(平成27年)に弥彦で開催された親王牌で優勝し、G1初制覇を果たした園田匠選手(S1・福岡・87期)。40歳となった今年も全日本選抜で優出を果たすなど、その力は健在だ。かつて自分も出場した五輪に触発されたのか、夏以降、好調な中川誠一郎選手(S1・熊本・85期)の先行から長い直線で抜け出して、再びの戴冠を目指す。悲願のGPへ賞金での出場が厳しくなった山田英明山田英明選手(S1・佐賀・89期)は弟の山田庸平選手(S1・佐賀・94期)と共に優勝を目指す。

脇本選手の欠場、そして賞金上位選手の不調もあって、混戦模様となっている今年の親王牌。舞台となる弥彦競輪場は63.1mと直線が長く、最後の最後までもつれる展開になりやすい。その混乱をすり抜けてゴールし、GP出場枠をもぎ取るのは一体、誰になるのか。G1戦線ラスト2を大いに楽しもうではないか。

ウィンチケット編集部
WINTICKET(ウィンチケット)のコンテンツ編集チーム。初心者でも0からわかる記事を150本以上執筆した他、グレードレースを中心とした「WINTICKETニュース」、ABEMA 競輪・オートレースチャンネルでの番組の見どころをまとめたレポート記事の執筆を担当。

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